想い出の海外旅行 NO.43 

南イタリア&マルタTOPへ

2007.2.8 更新

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貨物船に乗って
「貨物船に乗って、国境を越えてみたい。」
というと誰もが
「貨物船で女一人旅?変わったこというのねぇ」
と相手になってくれなかった。

政府観光局は「ご案内していません。」
大手旅行社は
「豪華客船の旅はいかがですか。」

絶対諦めたくなかった。
ひとがやらないことをやるには、それなりに
勇気と努力が必要だ。
そう考えて妙に納得して、決意が固まった。

そして、ほんとうにいろいろあって
遂に、この貨物船 SEA MALTA号 に乗れた。
それは、それは
面白い船旅だった。

貨物船 SEA MALTA号 で国境越え
   イタリアからマルタへ   
2000.5.27〜28

なぜ、貨物船に乗りたかったか

クルージングにのめり込んでいた私は、このとき既に大型船で、南極、カリブ海、南米、北極圏、
カナリア諸島、パナマ運河通過
のコースを体験し、ワールドクルージング、スエズ運河通過、大西洋・アフリカ、アラスカの予定があった。
しかし、マンネリ化していて、刺激が欲しい気持ちにもなっていた。

「貨物船に乗ったら面白いんじゃない。 国境越えもしよう。」と考えた。


海域選び


地中海にした。
ナポリから入国し、南イタリアを一週間ほど旅行して、乗船は、レッジョディカラーブリアで。
マルタのバレッタに上陸する。この間を貨物船で通ろうというわけだ。
マルタ3島を巡ったあと、シチリア島観光、再びレッジョディカラーブリアから、南イタリアを巡る
全行程 37日間の旅行のうちの、貨物船乗船はたった一晩のことである。

検索
当時クルージングは現在ほどポピュラーでは
なかった。
貨物船での旅はなおのこと。
企画を売り出している旅行社はなかった。

地球の○○方にひとこと
「港からマルタ共和国行きの船(HAM LET社)が出ている 電話 7122・・・」

会社名と電話番号をしっかり書き留めた。
日本での検索は諦めた。
ナポリへ行けばわかるだろう。

さて、ナポリの観光案内所では、レッジョディカラーブリアが離れた所で、観光地でもないなので、案内できないとあっさり断られてしまった。

こうなったらもうしょうがない。
とにかく港町まで行ってみるわよ・・・
予約まで

9日間の南イタリアの旅を終え、5月24日に列車でレッジョディカラーブリアに到着した。
なにはさておき、HAM LET社の事務所に出かけた。

乗船の条件

5月27日に、SEA MALTA号 が出港する予定。
マルタ共和国の首都 バレッタ港まで直行で、所要14〜15時間
船室は2段ベットがあるだけ。  トイレ シャワーは共同。
一泊2食付き、一部屋 5000リラ(約3000円) 
船員の指示に従うこと。  客船のようなサービスはできない。  自分のことは自分でする。

女性客はあなた一人だけだがいいか ⇒ OK  NOといったら乗せてもらえないでしょ。
二人分5000リラ払ってもらうがいいか ⇒ OK 3000円でしょ、 客船に乗ったら10〜30倍よ。

無事予約を終えて、ほっとした。 疲れがどっと出て長い昼寝をした。
二日間の船待ちの間、日帰り列車の旅をした。


いよいよ乗船

出港は荷揚げ作業が終わり次第、午後になるだろうとのことだったが、心配で11時に港に着いた。
2艘の船が停泊していた。
小さいなぁ〜、 3階建てマンションぐらいの高さだ。  1000トンもないかも。

★ 「私、今日この船に乗せてもらうんですけど、出港は何時ですか。」
☆ 「まだ早いよ、午後おいで」マルタの人だから英語ぺらぺら。 
   よかった。イタリア語は全然だめなので安心した。

桟橋そばのカフェで待つことにした。
1時間おきに確認に行くが、いつも「まだだよ。カフェで待ってなさい。」
気長に、気長に。  貨物を運ぶための貨物船に乗せていただくの。
荷揚げが終わらなければ出港できないでしょ。
4時間半待った。3時半に乗船許可が出た。

★「どこから乗るんですか。」
「僕についてきて。」

信じられないようなお話

タラップが、太い縄梯子で足を乗せるための細い板がついているだけ。
「えっ、 ちょっと、  これを登るの?  怖いよ〜〜。」
彼はもう登り始めている。 しょうがない! 行くわ。 貨物船のタラップというのはこれなのね。
縄を握りしめ1歩1歩登る。梯子が大きく揺れる。先を行く彼の動きが揺らせたのだろう。
下をみれば深い海!!!  行くも戻るも同じ、登らなくては・・・  15段以上はあったと思う。
半ば気が遠くなったような状態で2階まで登った。

誰かに抱きかかえられた。  ☆「うあぁ〜驚いた。大丈夫か?」 人が寄ってきた。
「大丈夫? もう心配ないからね。」 「あんた ほんとうに縄梯子で登って来たの?」  「凄いねぇ」

狐に摘まれたような私。縄梯子の恐怖で、脳貧血状態なのよ。一体なにがどうしたっていうの?

ことの次第をまとめてみると

船の後部に大型車も通れる出入り口があり、みんなそこから乗降する。
縄梯子は非常用で、通常は使わない。

お茶目な船員がいったジョークを、私が真に受けて登ってしまった。
船員はすぐ気がついたが、うっかり止めるとかえって危ないと判断して、黙っていた。
途中で落ちたら自分の責任だと思って、生きた気がしなかった。
まさか熟年の女性が(当時私は63歳)登るなんて誰が思う?

「驚かせないでくれよな!」

「それはこっちのいいたいことよ!」
初めて貨物船に乗るのよ。  これが登れないようじゃだめなんだなと思ったのよ。
船員に従いなさい、といわれたのよ。  自分のことは自分でしなさいって。
あっ そういえば私の荷物、まだ岸壁に置いたままだわ!

今となればおかしいと思うわよ。 まさかジョークとは!  まったく悪い人ねぇ・・・

でも、映画みたいで面白かったわよ〜う。 テーマパークでもこういうの見かけないものね。  
もう二度と嫌だけどね。

改めて  How do you do?    一件落着!!!

税官吏がやって来た。  「パスポート拝見いたします。」
そうだ!  イタリアからマルタへ行くのだ。  出国だ。
ポンとスタンプを押しておしまい。
"Bon voyage!"   ことさら重く響いた。

4時半過ぎ、 エンジン音も高く、長い汽笛を鳴らして、SEA  MALTA は岸壁を離れた。
何事もなかったかのように♪♪♪

@ レッジョディカラーブリア港

A コンテナを積んだSEA MALTA号の甲板

B 操舵室

C 甲板にて

D 救命ボートが1艘


E 船員さん
   奥が船長補佐
   手前が いたずらさん

F マルタ港の入り口



 
メンバ-紹介

乗組員 3名
 船長    人の好さそうな初老のおじさま
        操舵  通信  渉外  管理  雑用となんでもやる。
 船員 1  30代後半か  船長補佐  乗客担当
 船員 2  20代前半   調理  清掃  私にジョークをいったいたずらさん

乗客 6名  
      ドイツの大学生の二人連れ
      オランダの青年 ニート?
      イタリアの青年(少年っぽい)二人連れ
      そして 私 

船内案内

一番下は海の中  ここには貨物を積んでいる。
マルタからイタリアコースでは、マルタ特産の石材 イタリアからは、日用品を積んで帰る。
2階部分・(海上で1階部になるが、) は乗降口、車庫。
3階部分・(2階と言う感じだが) 操舵室  事務室  ラウンジ  調理室  食堂  船室  
       トイレ、シャワー 甲板

船内生活

@ 食事

   賄い食 セルフサービス
   メニューは、ビーフシチュー  肉も野菜も大きくてこってりした味付けだった。
   私にはスパイスが強すぎるかな。 5つ星レストランのように美味。 
   フルーツサラダ  日本でいうフルーツポンチ  オレンジ、メロン、ドライナツメヤシ
   サボテンの実  ソース(シロップ)が美味しい。
   とにかくボリュームたっぷり。働く若者用だから。賄い食は最高というのは真実だ。
   パン  コーヒー     アルコールの欲しい人は自動販売機で。
   後かたづけも各自行う。

A 船室 

   客室ではない。船員さんの部屋が空いていれば乗せてくれるシステム。
   3畳弱の広さで、2段ベットがあるだけ。角窓がついている。好きな部屋を使いなさい。                    鍵はない。 いちいちかける必要はないとのこと。
   ベットメイクは各自で行う。
   私は夜、ドアの前に荷物を置いて寝た。

B  トイレ・シャワー

   トイレ・シャワーは1カ所だけだ。 
   私が使うときは、ドアに 「女性使用中」のカードを掛けること。
   その間男性は使用禁止。   時間短縮に気を遣った。

   これ以外は自由だった。
   みんな甲板(といっても広くないが)に出て、海風に吹かれながらおしゃべりした。
   いままで旅してきたところのこと、これから行くところのこと、美味しかったもの、
   面白かったこと、自分の国のお国自慢などなど。
   私は唯一アジア人なので、アジアの旅行事情の質問攻めにあった。
   日本への旅行についても細かく聞かれた。電気製品の値段なども。
   だれも来日の経験がない。クレージーな物価高で今はとても行けないという。

   日が落ちると急に寒くなった。
   ラウンジへ移ってトランプをしたり、テレビを観たり、みんないつまでも団欒している。
   でも、私は少々疲れた。 長い時間待たされて、乗船では精力使い果たしたし・・・
  、ゆっくりシャワーを浴びて、パジャマには着替えないで寝た。

   疲れていたので、すぐ眠りに就いたが、大きいエンジンの音と、強い風の音、それに
   揺れがひどくて時々目が覚めた。
   私は南極の海でも一回も船酔いしない強者だから酔わなかったけれど、ふと「ここで             沈没したくないなぁ」と弱気になるほど揺れた。
   やっぱり貨物船の旅は生易しくない。


マルタに到着

「ドンドンドン」 ドアを叩く音。  「ゆめ子起きて。」
呼び声でとび起きると、朝6時。波は納まっていた。
「あと1時間で入港だよ。  早く食事して。」と船員さん。
窓の外は何にも見えないけど、明るくなっていた。

朝食は パン  ハム  チーズ  トマト  コーヒー
若者たちも寝ぼけ眼で食べている。
船員さんたちは忙しそうに、あっちへ行ったりこっちへ来たり。

遠くの島影がだんだん近づいてきた。   マルタだ。
ベージュ色の建物がびっしりと建ち並んでいる。
港内に入ると、大小の船やボートがびっしりと停泊している。

7時30分 隙間にはまり込むような感じで、着岸した。 午前7時30分  遂に到着。
岸壁にはたくさんの車、小型トラック、行き交う人々の話声、小さいながら活気の溢れる
様子が伝わってくる。

さよなら SEA MALTA   面白い体験ができたわ  ありがとう。

マルタに入国

船から20メートルほど離れた小さな小屋が税関だった。
パスポートを見せると、「ちょっと待って」と後回しになり、他の5人はすぐスタンプを押して
もらって終わり。
別れを惜しみながら、それぞれ次の旅へのスタートを切って行ってしまった。
 
私だけ20分ぐらい待たされた。 理由を告げられないまま。 ひとりぼっちで。
「なんかあるの?みんなと同じにしてたのに・・・」

やっと呼ばれた。「何泊の予定か、その後どこへ行くか。」と聞かれた。
とっさにある種の勘が働いた。
「怪しまれないようにしよう。落ち着いて!平然と!」
「2週間マルタに滞在します。 その間、ゴゾ島とコミノ島へも行きます。
その後、シチリア島に1週間、南イタリアに2週間滞在し、6月22日ナポリより
日本に帰国します。」
諸々の感情を抑えて、大きな声でゆっくりと答えた。

「よくわかりました。どうぞよい旅を。」  これで終わり。
拍子抜けした。  人種差別じゃないの。 よっぽど怒鳴っちゃおうかなと思ったけれど
ここは税関! 我慢が肝心!と耐えた。

なんだかさっぱりしない。 第一印象がよくない。
しかし、これ以後出会った人々はみんなとっても親切で優しく、マルタが大好きになった。
ちょっとスローでイライラするけどね。

ある時、宿のマダムに聞いてみた。
税関ではどうしてあのように扱われたのか。
「それはマルタがやがて EUに加盟するからよ。 だからヨーロッパの人優先っていうわけ
20分待たされたというけど、そんなの普通よ。なんで怒るの?」

そうか。わかった。
海外で日本の物差しを使わないという鉄則を忘れてた。
こんなことぐらいでガタガタいうようじゃあ、一人旅なんかできないわよ!!!

心のチャンネルを切り替えた。 
それからは自由でのんびりと一人旅を満喫できた。  めでたし! めでたし
   
SEA MALTA号 マルタ港にて

@

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